なるべく削らず、歯を残す
当院ではMI(ミニマルインターベンション)という概念のもとに治療を行っております。
その言葉の意味は、「歯を削る量を必要最小限にすること」です。
歯を削れば削るほど、ダメージは大きくなり歯の寿命も短くなります。従来の治療法では、銀歯を詰める場合、取れにくい形にするため健康な部分も削らなければなりませんでした。
ですが、悪い部分だけを削って、歯と同じ色の材料(接着性レジン)を詰める方法を用いることにより、銀歯にせずにその日のうちに白い歯で治すことが可能になります。
奥歯の間の虫歯などで銀歯にせざるを得ない場合でも、極力削る量を少なくしております。
削る量をなるべく少なく
マイクロスコープや拡大鏡を使用した精密治療
マイクロスコープを使用することで、肉眼では見えないような小さなヒビや虫歯も見つけることが可能になります。
当院で使用しているマイクロスコープ「ネクストビジョン」は、最高倍率80倍まで拡大が可能。虫歯の部分とそうでない部分をしっかりと見て確認しながら、削り残すことなくかつ最小限の虫歯部分だけを削り取ることができます。
また、つめものや被せ物を入れた際も、マイクロスコープで補綴物がしっかりと歯にフィットしているかどうか、段差や隙間がないかどうかを厳しくチェックすることで、せっかく治療した歯が再び虫歯や歯周病になってしまう確率を減らすことができます。
コンポジットレジン(CR)修復
虫歯を取り除いた後、削
った部分を修復するための方法として、一般的には「かぶせ物」や「つめ物」による修復が行われます。
ですが近年では材料の進化により「コンポジットレジン(CR)」と呼ばれる接着性の高い樹脂製の素材も開発され、さらに削る量を抑えることができる接着修復法と呼ばれる技術も確立してきました。
当院でも、このような技術を積極的に取り入れております。
それぞれの方法にメリット、デメリットがありますし、患者さまのお口の中の状態によっても適切な方法が異なりますが、さまざまな治療方法の中から患者さまにとって一番負担が少なく、メリットが高い治療方法をご紹介するよう努めております。
う蝕検知液
う蝕検知液とは、虫歯になっている部分のみを染め出すことができる薬剤です。
虫歯治療を行う上で何よりも大切なことは、虫歯に感染した部分を取り残しなくしっかりと除去することですが、いくらキャリアのある歯科医師でも健全な歯と虫歯の部位を完璧に見分けることは不可能で、歯を残すことを意識しすぎるがあまり虫歯の除去が不十分だったり、時には健康な歯までも削ってしまう事もあります。
そこで当院では、必要に応じてう蝕検知液を使用して虫歯部分を染め出し、しっかりと目で確認しながら虫歯の取り残しや歯の削りすぎを防ぐように努めています。
ダイアグノデント
ダイアグノデントは、歯に特殊なレーザーを照射することで虫歯の有無や進行度を測定することができる「虫歯検出装置」です。
従来の日本では、虫歯かどうかを測定するための検査として、先のとがった針のようなもの(「探針」と言います)を用いて判定を行ってきましたが、近年ではこの短針による検査は、虫歯の進行を促進したり、再石灰化を妨害してしまう危険性があるとして問題視されるようになりました。
ダイアグノデントを使用することで歯を傷つける事無く、また歯の再石灰化を邪魔することなく検診が可能になるほか、今まで見落としがちだった隠れた虫歯も発見できるため、より正確な診断が可能になります。
歯を削る必要のない初期の虫歯の場合にも、その進行・回復の度合いを数値で管理することができるため、リスクを考慮しながらの予防ケアを行うことができます。
神経はなるべく保存します
歯の寿命は神経が残っているかどうかで大きく変わってきます。
当院では、様々な薬剤を用いて、できるだけ神経を残す治療をしております。
MTAセメント
MTAセメントとは、1998年にアメリカで販売され、日本では2007年に販売を開始した歯科用セメントです。
殺菌効果が非常に高く、虫歯の不活性化をはじめ、神経の保護や根管の内部を埋める根管充填などさまざまな処置で応用が可能です。
特に、虫歯が進行して神経にまで達した場合には、むし歯が進行したところまでの組織を取り除きMTAセメントによって蓋をすることにより、従来では神経を抜いていた症状でも神経を保存出来る可能性が高まりました。
ただし全てのケースに適応されるわけではなく、MTAセメントを用いた場合でも状態によっては抜髄が必要となるケースもありますので、まずは神経を残せる可能性があるかどうか、ご相談いただければと思います。
深い虫歯でも、できる限り残します
虫歯が進行し、根っこの部分しか歯が残されていない状態になってしまうと、一般的には抜歯が必要と判断されます。それは、歯のふちが歯茎の中に埋まってしまっている状態では適合性の良い被せ物が作れなかったり、また無理やり作ったとしてもすぐに根っこが割れてしまい、すぐに抜歯が必要になってしまうからです。
ですがそのような場合でも、「歯のふちを歯茎より上に持ってくる処置」を行うことが出来れば、歯を残せる可能性は十分にあります。
歯のふちを歯茎よりも上に持ってくる処置については、主に「歯冠長延長術(クラウンレングスニング)」という方法と、「矯正的挺出(エキストルージョン)」という方法がありますが、症例によってどちらの方法を選択すべきか、もしくは両方を併用すべきか、見解が異なりますので、まずは歯科医師にご相談ください。
歯冠長延長術(クラウンレングスニング)
歯の周りの骨を削って歯茎を下げることで、歯のふちを歯茎より上に出していく処置です。
歯茎が下がってしまうという問題点もありますので一般的には奥歯の治療で用いられることが多く、前歯で行う際は下記の矯正的挺出(エキストルージョン)と併用して行うことがほとんどです。
また、一般的にクラウンレングスニングを行った場合は根面カリエス(露出した歯の根っこの部分にできる虫歯)になりやすいと言われておりますが、適合の良いかぶせ物でしっかりと覆ってあげることでそのリスクも下げることができます。
とはいえ、まったくリスクがないわけではありませんので、定期的に歯科医院に通ってメンテナンスを受けるとともに、術後の経過観察をしてもらうようにしましょう。
矯正的挺出(エキストルージョン)
部分的な矯正で歯を引っ張りあげてることで、歯のふちを歯茎より上に出していく処置です。歯茎を傷つける事がありませんので審美性を保つことができます。
歯を引き上げるための装置を一定期間口の中に装着しなければいけませんので、治療期間が長くなってしまうという問題もありますが、治療期間中は仮歯をいれて見た目に支障がないよう配慮いたしますので、普段通りの生活を送っていただけるかと思います。
ただし、治療後も引っ張り出した歯が戻らないように固定する期間が必要ですので、治療スケジュールについて担当の歯科医師としっかりと確認するようにしましょう。